昆虫食コラム

昆虫食とSDGsの関係について

最近、SDGs関連でお問い合わせいただくことも多いので、『昆虫食』『SDGs』についてまとめてみます。

【はじめに・・・】

昆虫食事業をされてる方には昆虫は単なる食材の一つの選択肢だからSDGsなんかと結びつけたり、地球を救うとか極端な触れ込みは好きではない方もたくさんいるのはよく知ってます。
また、そもそもSDGsは経済成長を前提とした資本主義的な考え方であり、脱成長こそ必要であるという考え方があります。

そういった視点を主張されているのは、以前、取材いただいた斎藤幸平先生です。

興味のある方はこちらをお読みください。(人新生の「資本論」・斎藤幸平著)

いろんな観点や論調があることは分かっています。

記事の読者は昆虫食上級者?も多いのですが、その上で、中高生くらいを対象としたわかりやすい記事にしていますので、ご了承ください。

 

【SDGsについて】

SDGsをキチンと略さず言えますか?
言えない人は多いと思いますので、改めて。

Sustainable Development Goals

持続可能な成長のための目標たち、です。

2015年9月、国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に、おいて、2030年までに達成すべき国際目標として記載されました。

「誰一人取り残さない 」をスローガンに、「2030年までに世界全体で目指す17の目標」を掲げています。

何となくみたことあるこの図です。

この中で、昆虫食が関係あると言われる項目を解説していきます。

①貧困をなくそう


・昆虫食をビジネスとすることで貧困が解消されます。
・昆虫は初期投資なく比較的容易に養殖が可能とされています。

なお、日本でも、6人に1人の割合で貧困層が存在します。これは先進国の中でも中国やアメリカに次いで深刻です。

また、貧困層の解消だけではなく、資本主義経済のもと、「貧富の差」はますます拡大しています。

貧困の連鎖も社会問題となっています。貧困はアジア・アフリカ・南米などの貧しい地域だけの問題ではなく、日本でも現実的な問題です。

コロナ禍により、ますますその差は広がっていくことが懸念されます。

②飢餓をゼロに


・2018年版「世界の食料安全保障と栄養の現状」報告書は、世界の飢餓人口の増加は続いており、2017年には8億2100万人、9人に1人が飢えに苦しんでいるとしました。
・かたや、日本はフードロスが社会問題となっています。こうしたアンバランスを解消していかなければなりません。

これについて、僕のサポートしてくださってる某役所の方がこんなことを言っていたのが印象的です。
その方は、国際交流事業の総括をされていて、東南アジアのある国と、会議の議題を決めようとしたそうです。
その国は『フードセキュリティ』すなわち食料確保をテーマにしようとしたそうですが、日本は『フードロス』が問題だから議題にできないと平行線だったそうです。
日本で暮らしていては、世界レベルで起こってる危機になかなか気づくことができないと仰ってました。

飢餓をなくすことを通じて、「安全で栄養のある食料を、安定してすべての人に供給すること」「投資や技術発展を通して持続可能な農業システムを構築すること」が必要です。

⑬気候変動に具体的な対策を

毎年のように、天気予報からは今年は猛暑、と言われています。

昔は、僕の住んでいる奈良県の平野部でも雪が積もったそうですが、今は年に数回パラつく程度。

本当に温度が上がっているのだと、身をもって実感します。

現に、温暖化の影響は毎年のように発令される「特別警報」などにも表れていますし、なんだか毎年日本のどこかで大水害が起こってませんか?

このまま気温が上昇した結果、現在私たちが送る生活は刻々と脅かされていきます。海面上昇や大規模な洪水など、自然災害が人々を襲い、南太平洋の小さな島国は国が沈むことも予想されています。

さて、この気候変動こそ昆虫食にいちばん大切なポイントとなります。
『コオロギは地球を救う』というキャッチコピーの論拠となる項目です。

世界の人口は増え続けています。
2050年には100億人を超えると言われています。

さて、人口が増えると食べ物が必要です。
その食料は全て天然というわけにはいきませんから、養殖が必要です。
特にタンパク質に関しては、人間の成長に欠かせませんが、日本においては、牛・豚・鳥がほぼ全ての選択肢です。世界全体で見れば他に羊なんかもありますが。あとは、植物性タンパク質としての大豆なんかでしょうか。

牛、豚、鳥の順に値段が高い場合が多いですが、これは、飼育に時間がかかる順であり、その分、餌や人件費が投入されているからです。投下資本の回収のためには、小売価格に転嫁されるのです。
美味しいかどうかというのは主観的な問題ですからね。

動物を育てるには、いろんなものが必要です。
・飼育場所
・水
・餌

1キロ分の牛肉の生産に必要な資源と、同量のコオロギの生産を比較したときに、圧倒的に資源が少なくて済むというのが、昆虫食がSDGsと紐づいて語られる理由です。

その他にも、コオロギが45日程度で出荷可能である点、雑食でなんでも食べる点、含有されるタンパク質が多い点、排出される二酸化炭素量が少ない点などが挙げられています。

以上より、昆虫食がSDGsの達成のために一役買うと言われているのです。

その筆頭がコオロギと言われています。

他にも、ミルワーム、カイコ、アメリカミズアブなども養殖に向いていると言われています(カイコはそもそも養殖下でしか生きられないですが)

ただ、課題も多いです。

課題1:昆虫は市場価格が高い

コオロギパウダーは安くても1キロ10,000円以上します。
かたや、鶏胸肉であれば、業務スーパーならキロ500円以下で買えることもあります。
市場価格を下げるためには、大量生産が必要です。
大量生産するとなると、結局は、ロスも出て、環境への負荷もそれなりに出るのではないかという疑問も生じてきます。

課題2:見た目への抵抗が大きい

永遠の課題のひとつ、昆虫は気持ち悪い、です。
とはいえ、最近、かなり抵抗が少ない人が増えてきたようにも感じます。
が、それは、僕が普段接する人はどちらかというと、好奇心旺盛な方が多いからかもしれません。
これまで、何度かYahoo!ニュースのTOPで出させていただいてますが、コメントが辛辣でだいたい炎上しています。笑
これについては、地道な普及活動を引き続き続けていきたいなと思います。
特に、子どもの頃から抵抗感なく受け入れられるように、取り組んでいきたいなと思います。
とはいえ、冷静に感がると、タコやイカも見た目、気持ち悪くありません??笑
見た目の抵抗を抑えるためには「パウダー」は有効です。
けど、食材を本当に楽しむのであれば、何でもかんでも乾燥させてパウダー、じゃ味気なくないですか?

課題3:既存の食材に比べて特段美味しいわけでもない

これは、誤解が少しあると思います。
美味しいわけでもない、というより、食材として研究しつくされていない、というのが正しいかもしれません。
昆虫料理は、素揚げとか、単調な料理がまだまだ多くて、「入ってても食べれるよね」から「入れると美味しくなったね」になる必要があるなーと感じています。
最近は、イベントでも自分で昆虫料理を作ってみようと思っているという方に出会うようになりました、レシピのグランプリなんかも去年から始まりましたし、一般家庭にも浸透していけばいいなと思っています

課題4:基準があいまい

昆虫を採取して販売する、調理してレストランで提供する。
保健所的に、明確な基準のもと、コメントされているわけではないと思います。
ジビエ、野草、大きなくくりで言えば同じです。
昆虫食が注目されたからといって、昆虫だけの基準を作るとタケノコ掘りは?松茸狩りは?となってわけが分かんなくなってしまいます。

以上、昆虫食市場はまだまだこれからの分野ですが、SDGsという言葉と共に、少しずつ浸透してきたのではと思います。

皆さんのご意見、お待ちしています!!