昆虫食コラム

昆虫食活動1周年記念・サンワコーヒーワークスの西川隆士さんと対談(2)ターゲットとメディア展開

引き続き、サンワ―コーヒーワークスの西川さんとの対談です。

前回のあらすじはこちら

激戦区にあるカフェの戦略の中に、昆虫食事業のヒントを見つけます。

~ターゲットを考える~

モノマガジンに載っていたり、王様のブランチで見たり、びっくりです。笑
何にしてもこの取り組みは多くの人に刺さらないとだめですね。
おかげさまで、「コーヒー」っていう設定がよかったと思っています。
裾野も広いですし、それは、クラウドファンディングの支援者の属性を見た時から何となく可能性というものを感じていました。
「昆虫食」がテーマですから、ニッチなテーマでどれだけ広くいろんなところに刺さるかなと思っていましたが、蓋を開けると、北海道から沖縄まで、年齢層もさまざまでした。
逆に、そこに広がりの可能性を感じたので、このまま行こうって思いました。

【「コオロギコーヒー」クラウドファンディング支援者の属性】

地元、奈良が強いが、北は北海道から沖縄まで偏りなく支援者がいる状況、実は中には、「マカオ」や「フィンランド」の支援者も。(配送のことを考慮して実家を送付先に設定する配慮をいただきました)

実は、ターゲットでいうと、私の場合とは真逆になるんです。
私のお店の話をすると、「商圏をできる限り狭く」っていうことで、10年前に1人でお店をはじめました。街のコーヒー屋さんになりたいなって思い、商圏の設定・宣伝方法を考えてきました。できる限り小さい円の中で、1つのコーヒー屋さんが成り立つのが良いお店だと思っていました。今でもその気持ちは変わりません。
商圏を狭くして、少ないお客さんでお店を成り立たせようとおもったら、1人でも多くの方に常連さんになって頂かないといけない。
そうすると、お店の商品が満足度の高い商品なのかどうかを常に自問自答する。
何回も来たくなるような内容、値段、味、量などお店の雰囲気も含めて見つめ直す時間が増えてきます。
今も変わらず何回もお客様が来ていただけるように考えています。

【サンワコーヒーワークス周辺のカフェ】

「スターバックス」こそないが、実は激戦区である。

そう考えると、天満のお店の立ち位置と、ルクアのお店の立ち位置って真逆になりますか??
サンワコーヒーという根底にあるブランドと、どうバランス取っているんですか?

【大阪・梅田ルクア店】

ルクアはJR大阪駅から直結。乗降客数は85万人で全国6位、東京駅の5位に次いで、横浜や品川、渋谷、池袋を凌ぐ日本を代表するターミナル駅である。

基本的に変わりません。
ルクアは確かに不特定多数の人がくる関西最大のターミナルの中にあります。
ルクアの中には、上の階には蔦屋書店とスターバックス、下の階には世界一の朝食と言われるbills、館内にはスターバックスリザーブが2店もある。正面から戦って勝てるような相手ではないですし、戦うつもりもありません。
ただ、既存のカフェに一石を投じるには、やはり、来ていただいた方にまた来てもらえるような接客だったり、商品だったりする。
ルクアに寄られる方は通勤の行き帰りだったり、休日のお買い物だったりする。
天満の店舗ほどお客さんが来られるスパンは短くないけど、ルクアに頻繁に来る方がカフェに立ち寄るときにいつも選んでもらえるような、そんな戦略となります。
天満と同じマインドですよ。
なるほど、初めてここに来たときのことは今でも覚えています。
お店が建て替えされる前で、DIYが素敵な雰囲気で、天満って飲み屋街だと思っていたのに入ってみたい感じで自然と吸い込まれました。

【改装前の店舗】

下町のカフェの雰囲気の中に、観葉植物などが所狭しと並ぶ。

かずきくんの場合は、商圏はたまたま遠くから来てくれていますけど、狭い商圏は必然的に「リピーターの獲得」とつながってきます。
スタッフの満足度もあがってきます。
リピーターさんが増えていくとお客さんと自然と会話する回数が増えてくるので自然と仲良くなれます。
そして、仲良くなるとリピーターさんになってもらいやすいので好循環がうまれます。
オープン当初お客さん少なかった時は一気に範囲を広げてってやりたかったのですが、グッとその気持ちを抑えてお客さんが少ないところからちょっとずつちょっとずつ広げていってお客さんとの関係も築いていって、今でもお店でお話させていただけるお客さんがたくさんいらっしゃいます。
そのようなお客さんがたくさんできたのは商圏を狭く設定しておいたおかげだなとおもっています。
西川さんの場合は、創業当初から、漠然とした中長期的なプランがあって、それに沿って変化に対応しながら運営されているって印象を受けます。
うちのメンバー達も、どうやら「クラウドファンディング」の立ち上げの頃から、明確にその先を認識していたようです。詳しくは教えてくれないですけど。笑
それに沿ってアドバイスしてくれているようで、なんかそれに似ています。
最初、近畿大学は見向きもしてくれなかったんですが、最近は生協とも話ができるようになりましたし、プレスリリースも協力してくれるようになりました。
どうやら、それって織り込み済みだったようで、「見向きするに値する成果」を出せば自ずと注目される。そのためにしないといけないことを着実に積み重ねていくだけだ、ということのようで。
僕の場合は、ジャンルだけに(笑)、狭いターゲットっていうのは無理なので、いかに広くニーズを掘り起こしていくかが重要です。

~メディア戦略を考える~

ところで、さっき、モノマガジンの話が出ましたが、不思議に思っていたことがあります。こんなにコーヒーがおいしくて、理念もしっかりしているのに、もっといろんな本やメディアで取り上げられるはずだと思っています。
もしかして、意図的にコントロールされています?
僕も最近、取材ってどうしたらいいのかなって悩むことはあります。
特に、新聞への露出は、「大学に僕の存在を認識してもらうため」というのと、「切口は変化球だけど、結構真剣に取り組んでいるので誤解しないでね」っていうのを知っていただくために積極的にお受けしていました。
あとは、「家族の理解を得るため」っていうのはありますけどね。おばあちゃんが一番喜ぶっていうのはあります。笑 未だに妹には気持ち悪がられますけど。笑
かずきくんの場合は、どんどん受けていったらいいと思いますよ。露出してナンボのジャンルじゃないですか。
うちの場合は、広告の打ち方は商圏の範囲に合わせています。
小さい街の小さいお店の生き残り方なので、広告の打ち出し方とか店前の看板は大事だと考えてきました。
特に広告、最初の方とか大手メディア&雑誌はお断りさせて頂きました。
「○○○」とか「×××」とか。(メディアの実名伏せています。)
理由としては、自分の実力以上のお客さんが来てしまうことは良くないからです。
例えば雑誌の取材が1本入って、商圏外からいきなり沢山の方が来てしまうと、お店の雰囲気が壊れるし、まだ地域のレベルで成り立っていたお店が雑誌の影響で実力以上に立派な写真とか宣伝文句とかしてくださるので、言い方が難しいですが自分のお店のポテンシャル以上のものを掲載することになってしまう。
それはわざわざ来て下さる方にとっても良くないし、常連さんからしても「そういうお店になっていくのかな?」と思われて少しずつ心が離れてしまう可能性がある。
なので、雑誌・メディアの受け方は気を付けていて、有名なメディアほどお断りしていました。
え!そんなのも断るんですか!?
ストイックですね、明確に自分の中の指針が定まっていないと普通のお店ではできないです。
僕の場合は、地道にイベントを重ねて直に接した人の方が数字に表れやすいと実感しています。
新聞の場合は、昆虫食に興味のある層と新聞の購読層がマッチしていないかもしれません。とはいえ、マッチしていないがゆえに、認知してもらえるというのはありますが。
まだまだこのジャンルは話題先行で、ニュースにはなるけど、みんなにとっては「壁の向こう」の世界でしかないというのを実感しています。
「へえ、昆虫も食べる時代になったんだー、私は食べないけどね。」という。
いま、それをどうすれば取り除けるか、いろんな側面で検討しています。昆虫食の永遠のテーマです。
そもそも、僕の場合は、大手のメディアから声がかかるようにまず頑張らないとダメですね!笑

次回は、コロナ禍における戦略やここだけの話、お蔵入り商品の話もあります。