昆虫食コラム

奈良県の公園事情・奈良公園と昆虫の関係について

後編のUPをする前に、奈良と公園について、少し詳しく解説しようと思います。

奈良の公園と言えば、何が思い浮かぶでしょう??

やはり、あれですよね。そう、「鹿」です。

そんな奈良公園は、奈良の観光の中心地であり、日本を代表する公園です。

※今回、議論するのは、「都市公園」です。

都市公園
一般的に「公園」と一口に言っても制度上は様々な分類があります。
概念図がこの通りで、大まかに、「国立・国定」などの自然公園と、都市計画区域内にある都市公園に分かれます。

(国土交通省HPより)

都市公園は、「都市公園法」という法律で規制されており、設置主体も「国」「都道府県」「市町村」と様々です。

(国営公園の例)
・国営ひたち海浜公園:ネモフィラやコキア、ROCKフェスで有名
・国営沖縄記念公園:那覇市の首里城地区と、美ら海水族館などのある海洋博地区に分かれる。
(都道府県立公園)
・上野恩賜公園・日比谷公園・代々木公園など(東京都)
・兼六園(石川県)
・奈良公園(奈良県)など
(市区町村立公園)
・名城公園(名古屋市)・
・大阪城公園(大阪市)など

奈良公園は世界遺産であり、国の名勝に指定されています。
鹿のいる「東大寺」「興福寺」などの周辺だけを思い浮かべがちですが、実は、広大で500ヘクタール以上もあります。
平坦な場所は、近鉄奈良駅より東側のわずか40ヘクタールほどに過ぎません。
その大半は、「春日奥山原始林」で、豊かな自然が広がっています。

奈良公園は、「都市公園法」が施行される遙か前から公園でした。
景観や自然を守るために、公園の規制面でも様々なルールがあります。
「昆虫」にターゲットを絞ると、奈良県の条例施行規則では、奈良公園内の貴重な昆虫を「採取禁止」すると明文で規定されています。
全国的にも非常に珍しいルールです。

そんな奈良公園の貴重な昆虫の中で特徴的なものを紹介します。

ルリセンチコガネ

いわゆる「糞虫」と呼ばれる甲虫です。
奈良公園は「糞虫の聖地」といわれています。なぜでしょうか。
鹿の糞が大量にあるからです。笑
奈良公園は、鹿が芝を食べ、糞をし、それを糞虫が分解することで芝が育つというサイクルが成り立っています。
なので、公園の管理において、芝刈りなどにほとんど費用がかからないそうです。、
なお、本州で見られる糞虫100種類程度のうち35種類ほどが奈良公園で見られるそうで、
公園の近くには「ならまち糞虫館」という糞虫に特化した展示施設があります。

さて、奈良県内には、奈良公園のほかに、特徴的な公園があります。

「国営飛鳥歴史公園」
・飛鳥地区は「高松塚の壁画」や「石舞台」などが含まれる古代の歴史の舞台の地です。

・平城地区(平城宮跡歴史公園)は710年に奈良に都があった場所であり、国・県・指定管理者など様々な主体が管理しています。


僕の活動に協力いただいているシェフが勤務しているレストランも平城宮跡内にあります。

奈良公園も含めて、これらは「町中の憩いの場」「昆虫採取をする公園」というより、
「観光地」であり「歴史文化」「世界遺産」という側面が非常に強いことはおわかりいただけると思います。
したがって、「食用で昆虫を採取する」という議論に馴染まないのは明らかです。
こういった公園の設置趣旨や目的からして、特別な事情がある場合は、条例等に明文化されていなくとも、
公園管理者の権限において、食用での採取を禁止するというルールも一定の合理性があるものと考えられます。
(根拠はもちろん「公園の管理上支障のある行為を禁ずる」という法令の文言です)

以上、奈良県の公園における特殊事情を考察してみました。

パネルディスカッションでは、街中の公園での昆虫採取を念頭にトークが展開されます。

それでは、昆虫を取って食べたくで仕方がない内山先生と、そうはいっても法令に基づいて適切に運用したい山口さんのせめぎあいが絶妙な、後編の自由気ままなパネルディスカッションをお待ちください!