前回、外来種について、特に「特定外来生物」ってどうなっているのかという記事を「昆虫」等に着目して書きました。(タイトル画像は「ヒアリ」です)
今回は、特に、「昆虫食」の世界で最も有名な外来昆虫のひとつである「フェモラータオオモモブトハムシ」を題材に、特定外来生物を含む外来の昆虫全般について考えてみます。
法律で指定されていない外来種なので、極端な話、何をしてもいいということになります。
アメリカザリガニも、同様です。
(現に、自宅でアメリカザリガニを飼っている方もいると思います。)
実は、採取に当たって、環境省の出先機関に確認をしてみましした。
(1)採取して、生きたまま運んでも問題ないか
→特定外来生物ではないので法令には抵触しない。今後、生息区域や被害が拡大するようなことがあれば、特定外来生物に指定の上、規制の対象とすることはあり得るが、現段階ではそのような段階にない。
(2) 極端な話、販売しても問題ないか
→環境省の所管ではコメントすることはない。その他、食品衛生上の取り決めにそって対応されたい。
もちろん、前提として、野に放つとか、自宅で羽化させるとか、そういう意図は全くないですが。。。笑
けど、なんだか宙に浮いている感じがして気持ち悪いので、調べてみました。
外来種に関する区分で「じゃあどういう位置づけなの?」ってことで。
「外来種被害防止行動計画」にある、「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」の「その他の総合対策外来種」に該当します。
詳細はよければこちらをご覧ください。
この計画の経緯を説明します。
平成22年10月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議で採択された愛知目標において、「2020年までに侵略的外来種とその定着経路が特定され、優先順位付けられ、優先度の高い種が制御され又は根絶される。」という個別目標が示されました。
また、平成24年9月に閣議決定された「生物多様性国家戦略2012-2020」において、外来生物法に基づく特定外来生物のみならず、我が国の生態系等に被害を及ぼす又は及ぼすおそれのある侵略的外来種について、リストを作成することを国別目標の一つとしましたことを受けて、作成されたものです。
この、「生態系被害防止外来種リスト」は愛知目標の達成に資するとともに、国、地方自治体、事業者、NGO・NPO、国民等の様々な主体に対し、外来種についての関心と理解を高め、適切な行動を呼びかけることで、外来種対策の進展を図ることを目的としています。
この計画における区分ですが、特定外来生物も含めて幅広く区分化されています。
定着予防外来種(定着を予防する外来種):国内に未定着のもの
・侵入予防外来種
例)ヒアリ ※ヒアリは特定外来生物でもあります。
・その他の定着予防外来種
例)外来カブトムシ・クワガタムシ
総合対策外来種(総合的に対策が必要な外来種)
・緊急対策外来種
例)アライグマ ※アライグマは特定外来生物でもあります。
・重点対策外来種
例)ウチワサボテン
・その他の総合対策外来種
例)グッピー
産業管理外来種:(適切な管理が必要な産業上重要な外来種)
産業又は公益的役割において重要で、代替性がないもの。
例)ニジマス
で、そもそも、このリストがどうやって作られたかというと、次のような点が考慮されているようです。
(1)幅広く生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種を選定
(2)侵略性が高く、我が国の生態系、人の生命・身体、農林水産業に被害を及ぼす又はそのおそれのある外来種を選定
(3)外来生物法に基づく規制の対象となる特定外来生物・未判定外来生物に加えて、同法の規制対象以外の外来種も幅広く選定
(4)国外由来の外来種だけでなく、国内由来の外来種も対象
なので、当たり前ですが、「キリン」とか「ライオン」は規定されていません。笑
その中で、フェモラータオオモモブトハムシは次のように位置づけられています。
・南アジア~東南アジア~中国南部。
・定着初期・限定分布(三重県・草地・河川敷)
・知見が十分でないものの、近縁種や同様の生態を持つ種が明らかに侵略的であるとの情報があるもの、又は、近年の国内への侵入や分布の拡大が注目されている等の理由により、知見の集積が必要とされているもの。
・植物防疫法違反で導入された個体が、インターネット等で流通、飼養されていた。
・逸出には十分な注意を払い、放逐を厳に慎むべき。
・2008年頃三重に定着、分布拡大が注目される。輸入について植物防疫法上の規制あり。生息実態及び生態系等への影響に関する知見の集積が必要。
このリストについては、生態系、人の生命・身体、農林水産業に被害を及ぼす又はそのおそれがあるものを生態的特性及び社会的状況も踏まえて選定した外来種のリストです。
しかしながら、繰り返しになりますが、特定外来生物及び未判定外来生物以外は外来生物法に基づく規制の対象にはなりません。
とはいえ、じゃあみだりに生態系を乱すようなことをしてもいいのかというと、それは道義的に良いとは言えません。
特に、「移動」については慎重に取り扱いが必要であると、ある信頼している方よりコメントをいただきましたので、今回、発信させていただきました。
今回、大学の昆虫生態学の先生の指導のもと、研究室の冷蔵庫に保管し、管理しています。
FUTURENAUTの櫻井くんや、バグズクッキングなど、一部に提供していますが、もちろん櫻井くんは、昆虫食のスタートアップの代表格ですし、バグズクッキングは、昆虫食の重鎮・内山昭一先生の監修です。
しっかりと管理ができ、信頼のおける方のみにお譲りしたものですし、適当に趣味でとって遊んでいるわけではありません。
だから、DMで売ってくださいって問い合わせがありましたが、得体の知れない人には提供できないです。
ということで、皆さんも、専門家の指導の下とまではいかなくとも、外来種についてきちんと理解した上で採取し、昆虫食を楽しみましょう。