昆虫食コラム

『昆虫食』と『嫌悪感』について(イベント実施の経験より)

最近発表されたこちらの論文を興味深く読ませていただきました。

昆虫食受容に関する心理学的研究の動向と展望

『昆虫食』と『嫌悪感』

昆虫食を多様な食の選択肢として食卓に並ぶ日が来るのか来ないのか、その最大の障壁がこれです。

昆虫食の世界に身をおいて4年ほど経ちました。

最初の頃は適当に山に入っていろんな虫を試しに食べていました。

人間って感覚が麻痺してきます。

身近なところで例えるなら緊急事態宣言。
最初の頃の東京の人のいないことと言ったらもう。
ところが2回目になったらどうでしょう。

長年、昆虫食に携わっていると、『嫌悪感』という世の中の人の大半が感じているものを共有できなくなるんですよね。

それはさておきまして、学術的では全くないのですが、この論文を読んでみたのを契機に、これまでのイベントでの経験からお話できたらと思います。

あくまで僕の経験に基づく主観的なものです。

(1)昆虫食のイベント
昆虫食のイベントに参加する、非常にハードルが高いです。

「主催者が誰か」というのがすごく大きな要素であると感じました。
奈良県で活動する際には、『県庁』や『県の施設の指定管理者』が主催でした。
抜群の信頼度ですので、ちょっと不安があるような方でも、思い切って参加したという方が多かったです。

『県の主催だから安心して参加した』

というご意見は多かったです。

昨年の会場です。

ドン引きするくらい立派でした。笑

2019年に、奈良でイベントしたときに、内山昭一先生が来られた時の盛況ぶりを見て、担当者の方が気合を入れて用意したみたいです。笑

『過去、こんな立派な会場で話したことがない』と内山さんですらおっしゃってました。

内山先生は、関西では「探偵ナイトスクープ」にも何度も出演されており、知名度も実績も抜群!!

さて、公共の主催イベントは、普段は食べることのない人が昆虫食のフィールドに来てくれます。

食べてもらえれば、価値観を変えていただける自信はありますので、僕自身がもっと頑張って、かずきのイベントなら行ってもいいか、と思ってもらえるように頑張らないといけませんね。

『信頼性の高い主催者による質の高いイベントは、参加者の心理的ハードルを下げる』

というお話しでした。

(2)男女比について
統計的にはわかりませんが、これについては僕自身はあまり感じたことはありませんね。

過去のイベント参加者の統計を取っても、ほぼ半々でした。
ただ、男性はお一人での参加が相対的に多かったです、あくまで僕が奈良で開催したイベントのケースです。ケースバイケースかと思います。

(3)年齢について
これは、昆虫食に限ったことではないのですが、歳を重ねると、考え方が凝り固まってしまいます。

県庁の幹部の方とお話しさせていただいた時に、

歳をとると食に対して保守的になってきたなと客観的に見ると思うことがある、まさかこんなに流行るようになるとは思ってなかったなあ。笑』
と仰ってました。

僕のサポートしてくださってる県庁の方は、初めて内山先生のセミナーに行って驚いたそうです。
若い人があまりに多いことに。
けど、こんなこともおっしゃってました。

『告知がSNSなどネットになりがちだけど、県民だよりを使って広報したら、内山先生も驚くくらいに高齢層が多かった』

確かに、県内全戸配布の威力は絶大なんですが、逆に若い世代は県民だより見ませんからね。
80歳のおばあちゃんがハガキでどーやって申し込むのって聞いてこられたそうです。笑

若い人が抵抗感がない傾向は確かにあるけれど、アプローチの掛け方により、中高年をターゲットにするチャンスはあるというお話でした。

最後に・・・
さて、上記はあくまでイベントに来た方の属性です。

イベントに来る方は、虫を食べたい方ですから、イベントには来ないし見向きもしない人、ここを取り崩さないと真の普及はないな、と思います。

例えば東京駅でやってた『虫グルメフェス』なんかは通りがかりの人にアプローチできます。
一定の効果はあったかもしれません。

とはいえ、僕の母もそうなのですが、
『絶対いや!!!』の一点張りです。笑

自分の母親にも食べさせることができないのに、世に広めることなんかできるんだろうか。

けど、ここで一呼吸。

『食べる自由』とともに、『食べない自由』もあると思います。

例えば、僕はお酒飲めないのですぐ酔っ払ってしまいます。笑

アルハラ、という言葉がありますが、無理にたべさせようとすると、ムシハラ、になってしまいますね。

昆虫を食べさせること自体が目的と化してはいけないと思います。

昆虫が多様な食の選択肢となればと思うし、あとは、昆虫を食べることを選択する人が後ろめたかったり好奇な目にさらされることがないようになって欲しいなと(後者についてはこの1、2年で圧倒的に変わりましたね)思っています。

昆虫食については、それだけではなく、本格的な普及に伴い、「食の安全保障」という論点も避けて通れません。

いま、追い風なことは間違いないですし、昆虫食の基準についても本格的な検討が始まるみたいですね。

引き続き頑張りたいと思います!!!