昆虫食コラム

法律の専門家から見た昆虫食の新しいビジネスチャンスと抱える問題点~NPO法人昆虫食普及ネットワークイベント番外編

昆虫食の第一人者・内山昭一さんが理事長を務めるNPO法人昆虫食普及ネットワークが主催された昆虫食オンラインイベント「よるのひるね129」にオンラインで参加された弁護士の小澤拓さんをインタビューすることになりました。
幼少の頃より、昆虫に対する想いが強かった小澤さん。
数十年の時を経て、その想いが昆虫食イベントへ参加を通じて封印が解かれたわけですが、改めて法律の専門家となり、「昆虫食」という新しいジャンルについて思うことや業界の課題とは・・・!?
コオロギコーヒーを共同開発した「サンワコーヒーワークス」にて、お話を伺うことになりました。

まさか、昆虫食がきっかけで弁護士さんとお話しすることになるとは思ってもみませんでした。笑 どうしてまた昆虫食の世界に足を踏み入れたんですか??
もともと、子どもの頃は虫取りが大好きで、家に持ち帰っては、累代飼育なんかをしていました。3世代、4世代と。
それから、何となく恥ずかしくなって封印していたんですよ。
最近、昆虫食が流行ってきたというのを見て、「お、これは眠っていた気持ちを呼び起こす時がきたんじゃないか!?」と思ってイベントに参加したわけです。
じゃあ、この前のイベントが初めてということですか?
いきなり初めてでイベントに参加するのはハードルが高いですけど、どうやって知ったんですか?
昆虫食なんかイベントないかなーってネットで探していまして、コロナで軒並み開催されていなくて、残念だなーって思っていたところ、内山さんのHPにたどり着きまして、たまたま見つけて飛び込みました。
コーヒーも美味しくいただきましたし、何よりそのセンスというか、そういうところが純粋に素晴らしいと思いまして。
たまたま同じ関西ということもあり、気持ちが押さえられずに個人的に会ってみたいと思ってお声がけしました。
うれしいです、興味持っていただきありがとうございます。
内山先生のホームページは、20年の昆虫食普及の歴史が詰まった昆虫食界の至宝だと思っています。
小澤さんは、法律でいうと専門的な分野はどちらになるんでしょう?
主に、企業向けの法務を取り扱っています。特に、新規ビジネスの分野なんかをサポートするような案件に力を入れています。
かずきさんの活動を拝見していて思うことは、単に昆虫を買って食べるところを動画にあげるだけなら、極端な話、僕でもできることだと思いますが、実際にコーヒーという商品を作っているところが素晴らしいなと思いました。コーヒーっていうチョイスがいいです。
ありがとうございます。
ちょうど2019年の春から始めて1年くらいです。
もともと、おかしな食材を食べる仲間たちと山に入っていろんな虫を食べるようなことをしていました。
学校でも、「あいつ虫食ってるヤバいやつ」みたいな感じで。笑
そこから、たまたま内山先生のイベントに参加して、いろんな方に出会ったことがきっかけですね。
始めるなら、何か自分の名刺代わりになるようなものが欲しいなと思って、2019年は、無印良品でせんべいができるっていうお話もあって、ようやく僕の時代が来た!これは来るんじゃない!?って思って。何となくコオロギってコーヒーに似た色じゃないですか。笑
てっきり、サンワコーヒーワークスさんではコオロギコーヒーが飲めるもんだと思っていました。笑
いや、これは本当に特別に作ってもらっているんで、お店では飲めないんですよ。笑
コロナ禍でお店が少し落ち着いていた合間だったこととか、昔からずっと通っていて親しくさせていただいていたこととか、いろんな幸運が重なってここまでこれました。
学生という立場ではアイデアは考えられても実際に行動することにはハードルがあると思いますが、素晴らしい行動力だと思います。普段、学生の方と接する機会は多いですが、どうしても講師的な立場と受講生的な立場、となってしまいます。今回のように、一対一で直に接することはあまりないので、大変刺激です。
今後の市場の展望とか、どう見てますか?
なんていうか、「タピオカ屋さん」的なところはあるかなって思っていまして。笑
市場がどんどん大きくなっていくことは歓迎するんですが、急拡大するのについていけていない部分もあるんじゃないかと思っています。新規ビジネスという点から、何か懸念されることってありますか?
最近、昆虫食のキャッチフレーズでよく見る、「高タンパク低脂質」とかがわかりやすいですが、大げさに言うと、「これはサスティナブルな、環境に優しい、栄養価も高い、素晴らしい食材だ!」という類の表現ですね。昆虫って繁殖は容易だし、やろうと思えばどんどん供給できることは私も実体験として知っていますので、いわゆる「持続可能性」のある産業になるポテンシャルはあるのだろうとは思います。
でも、それを目指すあまり、「栄養価も満点の、未来のスーパーフードだ!」というような持ち上げられ方がされてしまうと、「本当にそこまでのものなのか?」という疑問が出てきて、誇大広告などの問題に発展してしまうのではないかと思います。
これからこの市場に参入しようとするのであれば、例えば何と比べてどのような栄養価が高いのか、数値などをきちんと検証していかないと、思わぬ足のすくわれ方をしてしまうこともあり得るのではないかな、と、個人的には考えています。人の口に入るものですからね。
例えば、同じ分量の牛肉と比べたらって考えたときに、じゃあコオロギをステーキ1枚分食べるのか?っていうのは純粋に疑問です。笑
「そんなに食べるわけないじゃん」とは思います。笑
僕だって毎日コオロギ食べてるわけじゃないですし、ハンバーグも焼き鳥も好きですから、笑
そういうことなんですよね。笑 冷めた言い方をすれば、「牛」、「豚」、「鳥」と並ぶ地位に「虫」が来る、というのは少し楽観的すぎるし、一足飛びにそこを目指すと足をすくわれる可能性があると思います。エビ・カニぐらいの地位までは上るんじゃないかとは思いますけどね。
今のところ、昆虫に絞った法律は「フリー」というか、野放しになっているので、そこで誰かが何かやっちゃうと一気に規制されてしまう恐れはありますよね。
僕の場合は、大学がバックアップしてくれていたり、公共施設でイベントさせてもらっていたりしますし、そういうところは特に注意しないといけないと思っています。
とはいえ、分からないことは多いので、まず、「こういうことしたい」っていう企画を社会人のうちのメンバーに持っていくんですけど、「ちょっと待て!これはこういう法律があるから・・・」っていつも言われます。笑
簡単なことなら相談には乗りますよ。何か悩んでいることってあります??
「採取」したものを「売る」とか、「みんなで食べる」っていいのか悪いのかよくわからないんですよね。保健所に聞いても、「気を付けてね」っていう答えなんです。笑
ただ、これって、「タケノコ」とか、「ジビエ」と本質的には変わらないので、規制のしようがない気もします。
自治体の方とお仕事をすることも多いので、行政がそういう答えをしてしまうということも、内情はよくわかります。笑
けど、たぶん、本当に「わからない」が今のところの答えなんじゃないかと思います。
「飲食の提供には飲食店営業許可がいる」「提供するには食品衛生管理者の講習を受ける」ということなんですが、「野山で採ってきた昆虫を食べる」ことについては誰も判断していないという。笑
ただ、規制がないからこそ、自分でしっかりと注意して対策しないといけないなとは思っています。
特に、採取して食べるはイベントでは進んでやりたいと思ってはいません。ニーズはあるんですバランスが難しいですが、「加熱をしっかりすることや、死んだものは食べないとか、あとは採取する場所が農薬つかっていないかどうかとか。
いろいろ気を遣いますよね。今後、どんな風に展開していきたいんですか?
この道で起業してやっていくんですか?とか取材を受けると聞かれたりするんですが、その辺はまだ白紙というか、進路はいろんな可能性もあるので、まだ決められないですね。
とりあえず、大学は卒業しないと、単位もいくつか危ないのもあるので・・・笑
私としては、個人的に一緒に虫取りしてイベント参加したいくらいですので、どんどんいろんな仕掛けをしていって欲しいなと思っていますし、就職してもぜひ続けて欲しいと思います。
この活動の面白いところは、こうして「昆虫食」をきっかけに普段出会うことがないような人と交流できることにあります。
昆虫食に興味のある人って、人と少し違うことに興味があるだけあって、好奇心旺盛で、特に前向きな思考の方が本当に多い。
1年前、ただ漫然と大学に通っていた時と世界が180度変わりました。せっかくですので、この活動自身も「サスティナブル」になるように、仮に就職しても続けられるような土台をしっかりと作っていきたいです。
ぜひ、これからも頑張ってください。個人的に応援しています。
早く虫取りがしたいですよ!

小澤拓(おざわたく)

大阪弁護士会所属。共栄法律事務所アソシエイト弁護士。
2015年京都大学法科大学院修了。専門は企業法務、税務訴訟、企業倒産、一般民商事案件。
幼少から昆虫に親しみ、今回、昆虫食イベントに初めて参加。